内閣官房シェアリングエコノミ―伝道師として活動している森戸裕一氏。シェアリングという概念を地方自治体や地域のキーパーソンに広めることを目指す。地方創生の必要性が叫ばれている今、地方は何をすべきか？さらに5月12日に開催される九州シェアリングサミット2018の見どころについて、森戸氏に話を聞いた。
アジェンダ
- 地方創生にシェアリングエコノミーをどう使うか？
- 日本の風光明媚な原風景を収益化
- 地方版MICE構想
- 九州のシェアリングエコノミー最新動向
地方創生にシェアリングエコノミーをどう使うか？
シェアリングという概念は地方都市よりも東京の方が広がりやすい。それは「東京と地方都市の特性の違いによる」と森戸氏は指摘する。東京は近所付き合いが少ない。隣に住む人とシェアして何かを使うという江戸時代の長屋の醤油の貸し借りのようなことはほとんどない。だから知らない他人同士でネットを使って足りないものをシェアして使うというシェアリングエコノミーの発想も自然に受け入れることができる。「企業が外部からコンサルタントを雇うのと同じように、スキルや時間をお金でやり取りする文化が根付いている」という。
一方、地方都市はしっかりとした地域コミュニティができている。何か不足していること、困ったことがあっても、そのコミュニティ内でお互い助け合うことで解決できる。
この地域特性により、求められるシェアリングサービスの中身が東京と地方では違う。「だから東京では成功できたシェアリングサービスを地方にそのまま持っていっても成功しない」と森戸氏は指摘する。地方都市には地方が抱える課題解決のためのシェアリングエコノミ―事業を創る必要がある。その課題解決を行うことができる地方発のシェアリングベンチャーを立ち上げる起業家を育てることも森戸氏の役割の一つだ。
地方都市は今、少子高齢化による人口減少、若者の流出等、さまざまな問題を抱えている。「この問題を先送りすると子供や孫世代が困る。そうならないためにも今から問題解決のための行動を起こさなければならない」と森戸氏は強調する。一方で、地方のキーパーソンは、今までの成功体験や知見を総動員しても何から手をつけたら良いかわからない状況だという。
「そこで、シェアリングエコノミーという今までにない事業視点を地方都市で啓蒙している。それにより新たなビジネスが生まれる可能性は高い」「地方都市で何か創生のための行動を起こそうとしても、自分たちの地域には、あれがない、これがないと言って思考がストップしてしまう。でも、ネット時代の今、なければ借りてくれば良い。人材、お金、時間、スキル等、ネットを通じていくらでも調達することができる」「地方都市の不便とか、無いという現状自体が大きなビジネスチャンスになる」「地方都市はそもそもヒトやモノが不足し、生活のインフラなどは不便だったりするので、それをシェアリングの視点で便利にすれば地方都市の住民の方々も喜んでくれる」とした。
これらを総括して、現在、世の中では大きなルールチェンジが起きはじめているとする。働き方改革もそうだが、今の時代のビジネスは、新しくモノを作って、宣伝して、運んで、売るという従来型のモデルだけではなく、今ある資源をいかに有効活用できるかを考えるのも必要な時代になっている。
「ヤフオクやメルカリが普及して、身の回りの不要と感じるものでも視点を変えると価値があるということがわかった。身近な資産に値付けをして利益を出せるということに気付いた」「しかし、ビジネスになると、多くの方が新しい商品やサービスを作ろうとするモノづくりの視点になる。この従来型のビジネスを継承するのであれば東京一極集中のほうが効率的だ」「地方都市がそれを真似てもうまくいかない。地方創生事業の多くはそのような形になっているのでは。」とした。
だから地方都市にシェアリングエコノミーの概念を広げていくことが重要だと強調した。
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日本の風光明媚な原風景を収益化
では、地方都市で有望なシェアリングエコノミー事業とはどのようなものがあるのか。
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