働き方改革, 異業種と交流・コラボ

2018年6月11日

早起きして時差出勤を習慣化 東急電鉄とみんチャレの事業共創を追う!

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大手企業同士や大手企業とスタートアップのコラボ等、昨今、多くの企業がオープンイノベーションに取り組んでいる。2015年からいち早くアクセラレートプログラムを開始した東急電鉄。同社はこの度、「東急アクセラレートプログラム2017」で、渋谷賞を受賞したエーテンラボと時差通勤の習慣化に向けたテストマーケティングを実施すると発表した。同テストの目的は何か、コラボ内容と今後の展望について、東急電鉄 事業開発室 プロジェクト推進部 イノベーション推進課 山口ほたる氏(東急アクセラレートプログラム担当:以下、写真左)、同社 鉄道事業本部 事業戦略部 企画課 竹田宏美氏(写真右)、エーテンラボ 代表取締役 CEO長坂剛氏(写真中央)の3名に話を聞いた。

アジェンダ

  • 東急アクセラレートプログラムとは?
  • 個人で行う習慣化の成功率は8%、みんチャレチームだと69%に
  • 早起きして時差通勤を行う習慣化へのチャレンジ
  • 三日坊主防止アプリ「みんチャレ」を活用したテストマーケティング

 

東急アクセラレートプログラムとは?

東急アクセラレートプログラム

 

◆BizMICE編集部:最初に東急アクセラレートプラグラムについてご紹介いただけますか?

●山口氏(東急電鉄 東急アクセラレートプログラム担当):東急電鉄では、オープンイノベーションの推進を目的に、アクセラレートプログラムを2015年度からスタートしています。応募いただいた企業を審査して、審査を通過した企業とは東急グループの持つリソースを活用した社会実装支援を行っています。東急グループは鉄道だけではなく、不動産や商業施設、カード等、いろいろな企業の集合体で構成されており、それぞれが解決したい課題や目指すビジョンを持っています。これまでは自前主義で解決しようとしてきましたが、テクノロジーの進化のスピードが早くなり、かつ、マーケットの細分化が顕著になる中、自分達だけで完結するのではなく、外部の企業と組むことでより魅力的なサービスをユーザーに提供できるのではないかと考えました。コラボの相手は主にスタートアップですが、スタートアップは良い技術やサービスを持っていても、リソースが不足しています。お互いの強みを補完しあい事業共創を推進していきたいと考えています。

◆BizMICE編集部:コラボの相手はスタートアップだけなのですか?

●山口氏:これまでは主にアーリーステージのスタートアップのみを対象としていましたが、今年5月から募集を開始した第4期では、対象をミドル・レイター・上場企業や、一部の応募領域では海外企業にも広げています。アジャイルで開発を進めていきながら、プロダクトやサービスをスケールしていくベンチャーマインドを持つ企業であればどなたでも事業共創の可能性を探っていきます。

◆BizMICE編集部:2017年東急アクセラレートプログラムで、エーテンラボ(みんチャレ)が渋谷賞を受賞しました。選ばれた理由は何ですか?

●山口氏:みんチャレに限らず事業共創のポイントは3点あります。1つ目は、それぞれのビジョンが合致するか。2つ目は、そのために使えるお互いのリソースが合致するか、そして最後は、両社の温度感が合致するかどうかです。エーテンラボのビジョンは、人々の行動を習慣化させることで人々がよりよい生活を送れるようになることです。東急電鉄としても東急沿線に住んでいる人々を幸せにしたいと考えていたことから1つ目、2つ目は合致しました。東急はソフトウェアのスピーディな開発が不得意であり、また、最初の取り組みとしては早起きを対象にしましたが、それにとどまらず、勉強をする、運動する等、東急グループが持つさまざま事業への横展開がしやすいサービスだったことも大きなポイントでしたね。そして、3つ目の事業部側ですが、鉄道事業本部の竹田が早い段階から関心を示し、同じ温度感で協議を進めてくれたことで3つのポイントがクリアできました。

 

個人で行う習慣化の成功率は8%、みんチャレチームだと69%に

みんチャレ

◆BizMICE編集部:続いて「みんチャレ」の紹介をお願いします。

●長坂氏(エーテンラボ 代表取締役 CEO):みんチャレとは、ダイエットや英会話、美容等、新しい習慣を身つけたいユーザーが匿名で5人1組になり、各自がチャットで活動内容を共有、励ましあいながら習慣化を図るサービスです。ゲーミフィケーションとして、アプリ内通貨「みんチャレコイン」を獲得できるようにしています。チーム全員が目標を達成するとボーナスコインがもらえるので、チーム全員で目標を達成しようというインセンティブが高まります。一人で習慣化しようとする場合の成功率は俗に8%と言われていますが、みんチャレチームだとそれが69%まで跳ね上がります。一人で習慣化を目指すより8倍の効果があります。グーグルプレイのベストアプリにも2年連続で選ばれました。ユーザーに今までできなかったことができるようになった体験をしてもらい、高い評価を得ているのかと思います。

◆BizMICE編集部:どういった習慣をつけたいというニーズが多いのですか?

●長坂氏:多いのはヘルスケア関連、健康と美容ですね。さらに早起きの習慣をつけたいというニーズも相当あります。早起きは他と組み合わせて習慣化を行っているケースが多いです。早起きして朝活で勉強する、早起きして体重記録をする、ウォーキングする等、複数チャレンジをしています。それが東急アクセラレートプログラムに応募するキッカケにもなりました。

みんチャレの時間別の起動率ですが、実は半数の方が朝の5時や6時に起きて、みんチャレを立ち上げます。この早起きの文化をもっと広めていきたいと思いました。自分も最近は早起きして時差通勤で気持ちよく会社に行き、気持ちよく仕事に取り組んでいます。満員電車で会社に行く場合と、時差通勤で行く場合とでは気分が全然違いますね。また、みんチャレは、習慣化に特化するサービスです。どうすれば目標を達成できるかというコンテンツを持っているわけではありません。だから企画面は、さまざまな会社と組んで実施していきたいですね。

◆BizMICE編集部:東急グループ以外ともコラボしているのですか?

●長坂氏:直近では楽天やクックパッド、受験シーズンには学研とのコラボを行いました。習慣化したい内容があれば、どんどんコラボしていきたいと思っています。

◆BizMICE編集部:今の時代にあった事業の進め方ですね。ちなみに5人1組の5人にはどういった意味があるのですか?

●長坂氏:5人1組が一番習慣化しやすい効果があります。江戸時代には5人組という制度がありました。5人は一番目が届きやすい人数だそうです。みんチャレのテスト結果でも5人組の継続率が一番高かったですね。5人だと目が届きやすいので、他の人が励ませる等の理があります。

◆BizMICE編集部:昨今、社会貢献が一つのキーワードになっています。今回のテストマーケティングでは、貯めたコインで寄付ができるとあります。このアイデアはどこから出たのですか?

●長坂氏:もともとスポーツの世界、たとえば野球選手が盗塁に成功したら車椅子一台を病院に寄付するといった自分の利益を他者の利益に結び付けることで成功率を高めるメソッドがありました。ただ、それが一般にも適用できるかはわかりませんでしたが、みんチャレではそこを検証していきます。

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早起きして時差通勤を行う習慣化へのチャレンジ

満員電車

◆BizMICE編集部:東急電鉄は、みんチャレとコラボするにあたり、解決したい課題にはどういったものがあったのですか?

◆竹田氏(鉄道事業本部 事業戦略部 企画課):東急電鉄では、新・中期3か年経営計画「Make the Sustainable Growth」で、鉄道事業の混雑緩和による快適性向上を掲げています。東急沿線にお住まいの方々の生活をより良くすることが目的です。その中の1つとして、時差通勤を推進し、朝ラッシュ時間帯に集中する混雑の分散化に取り組んでいます。たとえば通勤前にお住いの駅周辺のサテライトオフィスを利用してもらうといった新しい働き方を提案しています。時差通勤やサテライトオフィスの活用は、東急電鉄社内でも取り組んでいます。例えば、当社では始業時刻を基準に、7時30分から10時30分の間で出社時間を30分毎に繰り上げ、または繰り下げできるスライド勤務を2009年より導入しているほか、社員はサテライトシェアオフィスNewWorkで働くことも可能です。また、昨年は5月から9月末まで、7時30分までに出社した本社勤務員に対して、1回の出勤につきTOKYU POINT200ポイント(200円相当)を付与する施策を実施しました。従業員の生産性向上とジムやショッピングなどに行き、夕方の時間を有効活用する「ゆう活」をさらに推進することが目的です。一方で、エーテンラボとコラボすることで、もっと多くの東急線沿線のお客さまに時差通勤をしてもらいたいと考えています。

◆BizMICE編集部:すでに東急電鉄で、時差出勤を始められていたのですね。時差通勤を行うと、たとえば残業時間が減るという効果はありますか?

◆竹田氏:時差通勤を行うとスムーズに仕事をスタートでき、夕方早く帰ろうとする意識が生まれます。朝は電話も鳴らず集中して仕事ができるので、生産性はあがりますね。

◆BizMICE編集部:大手企業とスタートアップが、実際にコラボしようとすると文化が違う等、障害が出てくるケースもあります。今回のケースはスムーズにいきましたか?

◆山口氏:そうですね。特に大きな問題はなかったと思います。弊社のアクセラレートプログラムは、応募していただいた後、一次書類審査と二次面談があります。二次面談の段階で、どの事業部と組んだら良いのか、ある程度のめぼしをつけ、その事業部にはその段階からスタートアップとその事業部が、約2か月間をかけてどういう共創を行ってどのような価値を提供するべきかを一緒に考えます。今回は鉄道事業部の竹田が、長坂さんとプランを詰めていきました。そして、最終プレゼン審査に臨みます。最終プレゼン前から事業部とスタートアップが提供可能なリソースを確認しながらプランを練っているので、最終プレゼン終了後、スムーズにテストマーケティングを行えます。

●長坂氏:最終プレゼン前に、ある程度何をすべきかを事業部門側と詰めていたので、その後も本当にスムーズに進みましたね。

ブレスト会議

◆BizMICE編集部:なるほど、早い段階から事業部門も巻き込むのは良いですね。でも、最終プレゼンで落ちるケースもあるのですよね?

●山口氏:あります。でも、賞を取れなくてもテストマーケティングを進めることもあります。賞を取ると与信がつくのでスタートアップにはメリットは大きいと思いますが、賞は取れなくても、最初の書類審査で落ちたとしてもテストマーケティングを一緒に実施するケースもあります。応募してもらった会社とはずっとご縁があると思っています。

東急電鉄
東急電鉄

◆BizMICE編集部:東急グループとして、新たな取り組み・チャレンジを育てて行こうという文化があるのですね。

●山口氏:それはありますね。アクセラレートプログラムとは別に、社員から新規事業を提案する社内起業家育成制度というものもあります。比較的、イノベーティブな意識は社内にあるのではないでしょうか。

◆BizMICE編集部:社内の新規事業とアクセラレートプログラムに応募してきたスタートアップがコラボすることもあるのですか?

●山口氏:社内起業家育成制度は東急グループ社員が自社新規事業で0から1を、アクセラレートプログラムは、スタートアップが東急グルー事業者と共に1から10を目指すのでフェーズが違います。今はその両者に線を引かせてもらっています。

三日坊主防止アプリ「みんチャレ」を活用したテストマーケティング

東急線早起き公式チャレンジ
東急線早起き公式チャレンジ

◆BizMICE編集部:今回のテストマーケティングの具体的な取り組みを教えてください。

◆長坂氏:ユーザーには、みんチャレのアプリを使って早起きの習慣化をしてもらいます。みんチャレを続けるとアプリ内の仮想のコインが溜まっていきます。今回は、コインを使うと教育クーポンを提供することができるようにしています。自分がためたコインを寄付できる機能です。過去の寄付プロジェクトでは、チャレンジ写真を送る回数が3.4倍多くなっていました。全員で目標を達成するとボーナスポイントがもらえるので、みんなで声をかけあって達成率をあげています。東急沿線ユーザーに、吊皮広告やポスター、Facebook、東急線アプリを使って早起きしようというプロジェクトへの参加を呼び掛けています。

●山口氏:東急電鉄として、過去にポイント等のインセンティブを付与して時差通勤を呼びかけることはありましたが、社会貢献のインセンティブで時差通勤を呼びかけることは初めてです。ここは検証していきたいですね。

◆BizMICE編集部:今回のテストマーケティングのゴールは何ですか?

●長坂氏:早起き習慣がどれだけ継続したかとユーザーの行動変容プロセスから得られるインサイトです。みんチャレでは習慣化を図りたいということで、早起きして時差通勤を行うという文脈を作りたいです。ユーザーが単に増えるだけでなく、増え方も重要だと認識しています。

●竹田氏:今までの時差通勤は個人のお客さまを対象にしてきましたが、今回はチームで時差通勤に取り組んでいただく仕組みです。この方法がうまくいくのか検証していきたいですね。また、社会貢献と時差通勤の親和性がどれぐらいあるのかも見ていきたいです。最終的には、交通事業者として皆が働きやすく、暮らしやすい環境をつくっていきたいと思っています。

◆BizMICE編集部:東急沿線の人々が早起きすると、東急の他のグループ会社への波及効果はありますか。

●長坂氏:早起きして早く仕事が終わると、東急グループの施設やサービスを使ってくれるという仮説は立てています。

●山口氏:夕方の沿線の賑わいに寄与すると思っています。後は、仕事を早めに切り上げてジムに通う、ゴルフの練習をする、家族との時間を過ごす等をして欲しいなとは思っています。何をするかはお客さま次第なので、東急電鉄としては背中を押し、その先にきちんとサービスを提供していくということをやっていきたと考えています。今は、その部分の土台作りを実施している最中です。

◆BizMICE編集部:テストマーケティングでユーザーの反応はどうですか?

●長坂氏:現在20チームが稼働しています。各チームでは、起きた時間や電車に乗った時間、東急が提供するキャンペーンの情報等をシェアしていますね。クーポンもさまざまな使い方があり、その使い方で盛り上がるなど、いろいろなコミュニケーションが見られます。多くの方に使ってもらえると、ユーザーインサイトが見えるので、良いインサイトが見つけられるようにしていきたいです。休日は使われないかなと思っていたのですが、休日でも報告しあっています。後は、別の東急線アプリの使い方の共有をされていますね。このアプリはこう使うとか、ここをもっとこう修正した方が良い等といった感じです。他のアプリのクオリティが上がるという効果もありました。

●竹田氏:テストマーケティングなので、スモールスタートで始めています。今は順調に推移しています。今後は、ユーザーの使い方のバリエーションを見たいですと思って思っています。

◆BizMICE編集部:ありがとうございます。では最後に今後の展開について教えていただけますか

●長坂氏:まずは鉄道事業と一緒に、早起きして時差通勤を行うという習慣をつけていきたいです。もう一つは沿線住民の方の健康を支えるような習慣化、さらにユーザーとのエンゲージメントを高めていきたいです。

●竹田氏:ユーザーの声を踏まえて、どこを改善すればよりユーザーに響くのかを検証していきます。沿線の朝ラッシュの混雑緩和に少しでも寄与できればと考えています。

●山口氏:大企業側がアイデアを持っていないのに、スタートアップの提案を聞いてもオープンイノベーションは生まれませんので、アクセラレートプログラムに限らず、社内でもこういう世界を作りたい、こういう世の中にしたいという信念をひとり一人が持つべきだと思います。アクセラレートプログラム1期目の社内の反応は「それはなんですか?」というものでした。でも、2期、3期と続けると、グループ会社や事業部側から大量の相談が来るようになりました。現在、第4期(注)を募集しており、引き続きこの流れを加速していきたいです。今後も引き続き、そのための草の根活動を実施していきたいですね。

◆BizMICE編集部:本日は貴重なお話をありがとうございました。

注:第3期目までは年1回の応募でしたが、第4期目から通年応募に切り替わりました。

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