イベント運営ノウハウ, キワミプロジェクト, 優秀人材の採用育成

2018年6月29日

ネット黎明期のECから仮想通貨・ブロックチェーンまで、アパレル業界のEC先駆者 林氏に過去と未来を聞く!

タグ: , , , , ,

ネットの黎明期からいち早くECに取り組み、今の仮想通貨、ブロックチェーンの状況をそれに准える株式会社インサイトバリュー・代表取締役 かつ亜細亜ブロックチェーン・暗号通貨コンソーシアム 副会長 の林芳男氏。多岐にわたる事業を経験してきた同氏に、ネット黎明期のEC、昨今の越境ECのトレンド、そして仮想通貨、ブロックチェーンの最新動向について話を聞いた。

アジェンダ

  • 独自子供服ブランド企画がきっかけで大手百貨店との取引を開始
  • まずは楽天を試してから
  • 1個10円以下のビーズが1億7000万円に!アクセタウンとは?
  • デザイン会社が求めるスキルとは?
  • 中国の販売会社が日本に現地法人を設立
  • 仮想通貨、ブロックチェーンにおける日本の2つの課題とは

  

独自子供服ブランド企画が大手百貨店との取引のきっかけに

ファッション

1982年5月、大学を中退した林氏は、アパレルメーカーの株式会社ナイガイの子会社に入社。丸9年間、企画営業を行い、東は静岡県浜松から九州大分に至る中部〜西日本でのファッション販売店500軒の新規開拓を行い、91年4月に退社。同年5月、神戸に拠点を置き、ファッションの販売代行を行う有限会社アルファベータを創業した。

創業1年目は中々軌道に乗らなかった。このままではまずいと考えていた矢先、創業60年以上のテキスタイル問屋の3代目社長と知り合い、アルファベータを共同経営者に委託し、そこで仕事を始めた。担当したのは、地方問屋もしくは百貨店への子供用防寒着の受注営業。1年間でわずか1シーズンだけの受注では自分の人件費の採算も合わないと気づき、3代目社長に自社の生産現場を活かしたオリジナル子供服ブランド「ハスキーボイス」の企画からプロモーション、営業展開の提案を行った。そして自社で展示会を行ったところ、全国33店舗の子供服売り場を持つ大手百貨店との取引およびPB(プライベートブランド)生産が決まった。当然ながら大手百貨店への取引にはシステムが必要になり、在庫管理、販売管理を行うシステムを開発したという。その後2年間、当事業を展開し、事業部としての売上が拡大して行ったが、本業であるテキスタイルの繊維市場の低迷が響き、95年にストップがかかった。

展示会

そんな中、このテキスタイル問屋の3代目社長から「今後、繊維業界もデジタル化が進む。そこを支援するビジネスに一緒に取り組んでほしい」と誘いを受け、繊維業界向けのWeb制作、DTP等の事業を始めた。

株式会社インサイトバリュー・代表取締役 兼 亜細亜ブロックチェーン・暗号通貨コンソーシアム 副会長 の林芳男氏
株式会社インサイトバリュー・代表取締役 兼 亜細亜ブロックチェーン・暗号通貨コンソーシアム 副会長 の林芳男氏

すぐに仕事は舞い込んだ。当時、大手繊維商社がBtoB向けの繊維素材のサイトを運営していたが、繊維素材の画像をうまく撮れないという相談を受けた。当時印刷物やネガポジなどはスキャナーを使って画像を撮っていたのだが、繊維素材も同様にスキャナーで画像を取り込んでいた為、光沢のある生地の良さを表現しづらかったのだ。

そこで、発売されたばかりのソニーのデジタルビデオを使って、ビデオを撮影台に固定し、素材に光を当てて、しわをよせながら撮影、一番良い風合いが出たところをキャプチャーし画像にした。「その画像の評判はすごくよかった」「その大手繊維商社が展開していた他の繊維素材の画像もすべて引き受けることになった」と林氏は振り返る。それに付随して写真のデジタルデータ管理の話も来た。

当時、写真はネガポジで管理しており煩雑さが課題だった。そこでデジタルで画像を管理するサービスを開始すると企業からの問合せが殺到したのだ。さらに当時、某社が日本で繊維業界初のポータルサイトを開始。林氏らは、そこに今までの業界経験を生かして「ブランド紹介」や「ショップ紹介」の企画を持ち込み、ページの立ち上げ等を行った。

 

まずは楽天を試してから

 

1998年6月、テキスタイル問屋を退職し、これまで行ってきたWeb制作とDTP、デジタル画像管理の事業をデジタル事業部として有限会社アルファベータ内に設置した。また、既に神戸・大阪で3店舗まで増加していたファッション販売代行業はアパレル事業部として切り分け、再スタートを切った。

当時、アパレルメーカーの単独ブランドのECはまだ存在していなかったが、サンエーインターナショナル社からテストモデルでブランド単独のインターネット販売をやってみたいと依頼があった。引き受けたのはいいものの、当時は代金引換配送を行っている宅配業者はヤマト運輸のみ。だが、サンエーインターナショナル社の物流関連施設は全て佐川急便に委託されており、当時の佐川急便には個人への宅配は出来ない、また代金引換配送もないという大きな課題があった。そんな中、「林君の会社はファッション販売代行も行っているのだから、商品の物流管理もすべて行って欲しい」と先方の取締役経営企画室長からお願いされたという。結果、商品在庫や入荷、出荷、商品の注文、Webページの制作などをすべてワンストップで管理した。「当時、リアル店舗とECを運営している当社は、おそらく日本初のクリック&モルタルを実践した企業でした」と振り返る。

当事業を通じてCRMノウハウが蓄積していき、EC向けオリジナルCMSを開発し、WebソリューションとしてASPで販売した。当時ネットはパソコンが中心だったが、携帯電話(ガラケー)でインターネットが使えるようになると、いち早くそれにも対応。同ソリューションへの問合せは急増した。

VUITTON

インターネットが急速に普及していくにつれ、多くの企業が続々とECへ参入していった。「中には競合がECサイトを始めたから自分達も始めるという安易な考えで、ECサイトを始めようとする企業も多くいました。」「EC運営はそんなに簡単ではない。実店舗の経験がない企業や、一般消費者との対話をしたことが無くEC運営の難しさをわかってない会社には、『まずは楽天で試してみてください』と言っていましたね。」と林氏は語る。当時はまだスタートしたばかりの楽天だが、自社でECサイトを始めるより遥かに安いコストで始められる。「当時、ファッションブランドは、まずファッションビルのテナントに出店し、そこでブランド力や顧客獲得力を高められれば銀座や表参道等に独自の路面店を出店するという流れが主流だった。」「EC運営も同様と考え、まずはモールの楽天で試してもらって、その後、軌道に乗れば本格的に自社サイトでECを始めたら良い。自分達は、本格的に自社ECサイトを展開する際に支援をするというシナリオを描いていた。」とした。

業績は順調に拡大し、アパレル企業以外の会社も支援するようになった。日本で初となる歯医者向けのポータルサイトや、大手食品企業、大手塗料メーカー、さらに大手エンターテイメント施設、大手百貨店サイト等を数十社のコンペで勝ち取るなど、数年間で約200以上のサイトをプロデュースから運営代行に至るまで支援した。

 

1個10円以下のビーズが1億7000万円に!アクセタウンとは?

 ビーズ

ある時、ビーズの輸入卸会社から相談が来た。「ビーズの在庫が膨大に膨れ上がり、これを何とか処分したい。タダでもいいから一般消費者に配りたいが、インターネットで何とか売れないか?」といったものだった。ビーズは1個10円もしない薄利多売が必要な世界。さらに完成品ではなくパーツなのでユーザーに売るのは難しい。どうさばくか?と頭を悩ませた。

考えた結果、今でいうSNSの機能を持つ『アクセタウン』というインターネット上のバーチャルタウンのアクセサリーの街を作った。ユーザーは会員登録という名の住民登録を『町役場』でする。街には『公園』や『ショップ』、『ラボ』、『ギャラリー』がある。『公園』には井戸端会議や情報交換ができるコミュニティの掲示板を設置。『ギャラリー』では住民が自分で『ラボ』内からダウンロードしたShockwaveというアプリとビーズ画像を使って作成したビーズ作品を公開でき、住民による投票が毎月行われた。そして、投票で1位の住民にはサイトから1万円分のポイントが付与され、『ショップ』でビーズが買えるといった仕掛けを作った。『アクセタウン』はビーズユーザーの間ですぐに広まった。ユーザーが自分達で利用方法を考えて実施、掲示板内に全国の支部ができ、ビーズのカリスマクリエイターが自然と生まれ、作品に対するレビューや情報交換の書き込みが増えて行き、それに連動して売上が倍々ゲームで伸びていった。

書き込みは日々増えていき、立ち上げから5ヶ月目には『ショップ』内で週1回行われていたタイムセールが重なるとアクセス負荷によりサーバー内プログラムが落ち始め、タイムセールを休止し、アクセスの制限までを行うようになった。そこで、掲示板への書き込みは2000円以上の買い物をしたユーザーに限定。ハードルを上げた分、それを乗り越えてなお参加し続けるユーザーは、アクセタウンへのロイヤリティが高まっていき、更に売上拡大していったという。結果、初年度で1億7,000万円、次年度2億6,000万円の売上を上げることができた。

 

デザイン会社が求めるスキルとは?

 

順調に成長してきたが、林自身は体調を崩しがちになり、事業を他社に継承、会社をたたむ決意をした。その後、少し落ち着いたペースで仕事をしようとインサイトバリュー社を立ち上げた。大阪府のブランド研究会で知り合ったデザイン会社経営の方がファッション、アニメ、ブランディングに強い専門学校の上田学園の学園長をされており、2008年にある会合で再会することとなった。その縁で、2010年に学校のホームページの制作や運用管理を請け負う。さらに2011年4月から学生にクリエーターとしての発信力を身につけるためにWebを教えてほしいと依頼があり、大阪総合デザイン専門学校ブランド創造学科及びビジュアルコミュニケーション学科で講師として登壇するようになった。

同学科に入学する学生は、デザイン会社に就職するケースが多い。デザイン会社では、デザインだけでなくプランニングスキルも求めてくる。「だから学生にはデザインだけを教えるのではなく、全体視点からWebマーケティング、プランニングができ、Webサイトを構築できる人材になるよう教育している。」と語る。「自分が作りたい、好きなサイトではなく、顧客ニーズをもとにプランニングし、Webを構築できる人材を輩出している。」とした。

 

中国の販売会社が日本に現地法人を設立

中国

林氏のキャリアで、ECは切っても切り離せない。そのECでは昨今、越境ECに注目が集まっている。越境ECとは、その名の通り国をまたぐモノの販売。そして、この越境ECで「中国政府の越境EC制度の変更が今後、大きな変化をもたらす。」と林氏は指摘する。中国における越境ECでは、これまで課税逃れや個人の代理購入が主流となっていた。今後、これらは徐々に排除され、一定の規模以上の販売会社が有利になる。

この流れに中国企業の動きも早い。「中国の越境EC企業が日本にどんどん現地法人を設立している。」と語る。某日本商品で中国国内のシェア3位の販売会社が大阪に現地法人を設立した。林氏がその販売会社に「なぜ、日本法人を設立したのか?」と問うと、その販売会社社長は、「中国でも、その商品を日本メーカーに卸してもらっているが、中国国内の正規代理店としてシェア3位なので割り当てられる商品の数は決まってしまう。このままでは中国国内の正規代理店の1、2位を逆転できない。だから日本に現地法人を作り、日本メーカーから直接商品を購入したい。」「日本メーカーとともに自分達のブランドのOEM製品も作りたい。」と、その理由を説明した。

「中国旅行者の爆買いも今後は落ち着いてくるだろう。」と林氏は続けた。一方で、この動きは一長一短となる。「中国旅行者数の増加や、爆買いで潤っている業界もある。」「だからソフトランディングで実行していくことが重要だ。」とした。

 

仮想通貨、ブロックチェーンにおける日本の2つの課題とは

仮想通貨

そんな中国で2017年春、衝撃的なニュースが走った。中国の仮想通貨取引所が一斉に閉鎖されたのだ。中国でマイニングをやっていた会社から、すぐに林氏に連絡がきた。「毎日数百枚のビットコインを生み出しているが、日本の取引所で取り扱うことは可能か?」「日本での取引所の状況はどうか?」と聞いてきた。最終的に、彼らは中国から国外にマイニング事業を移設したいと考えている。その移設先の候補として日本も挙がったのだ。しかし、大量に仮想通貨を持っている中国の投資家は、香港の取引所で仮想通貨を売買し、その勢いは収まるどころか更に拡大している。

日本の仮想通貨、ブロックチェーン市場には、2つの課題が存在する。1つは海外、特に中国との関係性をもっと強化すること。IT、IOT、AI、ブロックチェーン技術という点では、確実に日本は中国に抜かれている。この差は今後開く一方。しかし、うまく組むことで日本にもまだまだチャンスが広がる。事実、「中国企業は日本と色々な取り組みをしていきたいと考えている。」と林氏は指摘する。前述の中国の投資家が香港で仮想通貨取引をしていた事実について、「日本で何をどう手続きしていいのか中国人はわからない。」とその理由を説明した。

2つ目は、仮想通貨、ブロックチェーン市場の成熟度だ。コインチェックでNEMの流出問題が起きたように、セキュリティや法への意識はまだまだ低い。第1次インターネットブームでビジネスをしてきた世代は、2005年の個人情報保護法の施行やトロイの木馬ウィルスの流行など、セキュリティへの対応の重要性をほぼ当たり前のように認識している。インターネット利用者保護の観点で法制度やセキュリティのハードルが高くなってきた過去同様、今後仮想通貨、ブロックチェーンなどの利用者保護の観点で高くなってくることを、「仮想通貨業界の各プレイヤーに対しての啓蒙活動、コンサルティングが必要になってくる。」とする。

これらの課題の解決を目指すのが、亜細亜ブロックチェーン・暗号通貨コンソーシアムだ。林氏が副会長をつとめる同コンソーシアムは、日本と海外との掛け橋になり、かつブロックチェーンに関する法務、セキュリティ、ファイナンスのアドバイス、ICOを実施する場合の支援等、さまざまな展開を行っている。

「仮想通貨、ブロックチェーンはまだまだ危なかっしい面がある。インターネットの黎明期にも、いろいろな事件やトラブルが起こりました。でも市民権を得た。今の仮想通貨、ブロックチェーンは当時とよく似ている。これから徐々に本物が残っていく。」と語り、最後に「インターネットを普及させてきたノウハウ、知見を活かし、仮想通貨、ブロックチェーンの普及に貢献したい。」とした。(BizMICE編集部)

高級会場からおしゃれな会場までカンタン予約!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です